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父島の動植物

カツオドリ、ミズナギドリ類などの海鳥

小笠原ではこれまでに20種もの海鳥の繁殖が確認されています。数が多いカツオドリとオナガミズナギドリは南島や母島南崎に生息しており、洋上から飛んでいる姿を見ることができます。オナガミズナギドリのほか、シロハラミズナギドリやセグロミズナギドリ、アナドリなどのミズナギドリ類は、11~12月頃の巣立ちの時期になると若鳥が明かりをめがけて飛び立つため、夜間に母島や父島の集落に飛来します。落下している若鳥は住民たちにより保護され、翌朝放鳥されます。

カツオドリ

固有の哺乳類・鳥類

小笠原の陸鳥は15種確認されており、その多くが固有種となっています。アカガシラカラスバトは、かつては幻の鳥といわれるほど少なくなっていましたが、保全の取組がなされた結果、現在は山域に限らず集落でも見かけるようになっています。他にも、村の鳥であり母島列島にしかいないハハジマメグロやオガサワラカワラヒワ、小笠原唯一の猛禽類オガサワラノスリ、ハシナガウグイスなどがいます。また、夕方の空を舞う唯一の固有哺乳類のオガサワラオオコウモリもいます。

アカガシラカラスバト

固有種の昆虫類

小笠原諸島には、オガサワラシジミ(母島)、オガサワラハンミョウ(兄島)、トンボ類、オガサワラゼミなど、固有種の昆虫類が多くいます。弟島には、父島では見られなくなった固有のトンボ類5種(オガサワライトトンボ、オガサワラアオイトトンボ、ハナダカトンボ、シマアカネ、オガサワラトンボ)がすべて生息しています。弟島では、固有種のトンボ類が安定して繁殖することができるように人工池を設置しました。今後は、繁殖したトンボが、ほかの島にも移り住んでいくことが期待されています。

シマアカネ

爬虫類

小笠原に在来の両生類はいません。爬虫類においてもオガサワラトカゲとミナミトリシマヤモリ(南鳥島)のみです。オガサワラトカゲは光沢のある褐色の体表をしており、日中、農道や林道の脇や樹上で見ることができます。父島、母島では、それよりも多く見かけるのが外来種のグリーンアノールです。その捕食圧は昆虫相を壊滅させるほど大きく、オガサワラトカゲとの生息環境の競合も懸念されています。近年、多くの昆虫が棲む兄島にアノールの侵入が確認され、その対策が進められています。

グリーンアノール

固有の陸産貝類

小笠原の陸産貝類は、樹上性・地上性・地中性など棲み場所に合わせて進化しており、記録されている在来種106種のうち100種が固有種です。特にカタマイマイ属などでは適応放散による種分化の典型が見られます。ただし、これを捕食する外来プラナリアのニューニギアヤリガタリクウズムシの影響で、父島の陸産貝類は絶滅の危機に瀕しています。このプラナリアが他の場所に拡散するのを防止するため、乗下船時や入山・下山時にはプラナリアが潜んでいる可能性がある靴底などの泥をよく落とすよう啓発しています。

カタツムリ
オガサワラモノアラガイ

鯨類・ウミガメ類

世界の海にいる85種のイルカ・クジラのうち、小笠原では24種が確認されています。ミナミハンドウイルカは人と一緒に泳いでくれたり、ハシナガイルカは船に近づいてきたりすることがあります。ザトウクジラは冬になると小笠原の近海で子育てをします。その様子は洋上からだけでなく陸上からも見ることができます。また、小笠原は日本最大のアオウミガメの繁殖地となっており、夏になると夜の砂浜に母ガメが産卵のために上陸します。

イルカ

海水魚

小笠原の海は「ボニンブルー」と呼ばれる濃い青色をしており、インド洋や太平洋に広く分布する魚が多くいます。また、他の陸地から遠く離れていることから、オビシメ、ミズタマヤッコなどの固有種のほか、ユウゼンのように伊豆諸島含めた海域の固有種もいます。シロワニというサメは世界的に少なくなっていますが、小笠原が日本唯一の繁殖海域となっています。近年は小笠原の東の深海を生息海域とするダイオウイカが泳ぐ映像が公開され、話題になりました。

ユウゼン

サンゴ類

小笠原の海域には約200種のサンゴが生息しています。同緯度の沖縄とは異なり海中地形が急峻なためリーフは発達していないものの、ソボテンミドリイシ、オガサワラアザミサンゴ、ナガレハナサンゴなどの造礁サンゴの種数が海洋島としては際立って多くなっています。さらにオニヒトデや白化現象による被害が少ないため、日本の海域でほぼ失われてしまった極相のサンゴ群落が残っています。父島製氷海岸には大規模な枝サンゴ群落の景色が広がっています。

サンゴ礁

陸水棲動物

小笠原の陸水棲動物の多くは幼生期を海で過ごします。なぜなら、その祖先が他の島から海を泳いで小笠原までたどりついたからです。例えば、淡水魚のオガサワラヨシノボリやオガサワラモクズガニは、海との交流をやめたことで固有種へと進化しました。また、オガサワラカワニナやナガレフナムシ、オガサワラヌマエビは海域から淡水域へと進出した特異な固有種です。他にも、魚類やヤドカリ類、エビ類、カニ類、アメンボなどがいます。

オガサワラヨシノボリ

乾性低木林

父島の一部と母島列島のごく一部、そして兄島一体には、土壌の薄い乾燥した環境に適応した背丈が3~8m程度の樹木(シマイスノキ、ヒメフトモモ、唯一の固有の針葉樹シマムロ、コバノアカテツ、ヒメツバキなど)によって構成された「乾性低木林」が広がっています。兄島の一部では樹木の背丈が1~3mとさらに低く、葉は小さく厚いものが多くなっています。しかし、モクマオウやギンネムなどの外来樹木の影響により、在来植物の生長・更新が阻害される事態も起きています。

父島の乾性低木林

岩上荒原植生

兄島には、乾性低木林と混在して緩傾斜な台地上に露岩地があり、シラゲテンノウメやウラジロコムラサキといった樹木のほか、ムニンテンツキ、シマカモノハシ、マツバシバ、ムニンタイトゴメ、コヘラナレンなどの貴重な草本群落が残存し、岩上荒原植生が成立しています。ここには、現在は兄島にしか生息していないオガサワラハンミョウ等の固有の昆虫類も生息しています。なお、兄島は、一般の方の立ち入りは浜以外できません。

岩上荒原植生

海岸植生

小笠原の海岸植生は南西諸島の5分の1ほどの20数種と種数は少なくなっています。ハマゴウやグンバイヒルガオが砂浜を覆い、その後方にクサトベラやモンパノキなど、さらに奥に高木のモモタマナ、テリハボク(通称タマナ)、オオハマボウ(通称カイガンイチビ)、ハスノハギリが占めています。特に高木の樹木は防風・防潮のために植栽され、海岸沿いの道路脇でも見かけます。どの植物の実も水に浮かぶことができるため、海流散布により小笠原に定着しました。

小港海岸の海岸植生

シダ類

小笠原のような海洋島は、実が陸上を転がって分散するシイ・カシ類が全くなく、胞子が風に乗って飛散するシダ植物の割合が大陸や大陸島よりも多くなっています。父島・母島の湿った林内・林縁や沢沿いにかけては、木生シダが多くみられ、小笠原の森の特徴の一つとなっています。木生シダの中でも固有種であるマルハチは茎の表面にある葉柄の落ちた跡が「八」を逆さまにしたように見えるのが特徴的です。

マルハチ

ヤシ類とタコノキ

小笠原にはオガサワラビロウ(通称シュロ)とノヤシ(通称セボレーヤシ)の2種の固有のヤシが生育しています。ノヤシは林内や沢沿いの土壌の深い場所に生えており、明るい緑色の葉とすっと伸びた葉鞘は、森の中でも美しい存在感があります。ヤシに似た樹形のタコノキは「村の木」としてもよく知られ、道路沿いや園地に植栽されています。また、海辺のココヤシ、農地のアレカヤシ、道路沿いのトックリヤシなどの園芸品種が、南国の雰囲気を演出しています。

タコノキの実

在来動物の保全

小笠原固有の動物たちは大海の孤島で進化を遂げたため外からの影響に弱く、人によって持ち込まれた外来生物により、数を減らす動物が多くいます。ハト・海鳥などの鳥類やオオコウモリはノネコに襲われ、陸産貝類はプラナリアのほかにもクマネズミや外来アリによる食害を受けています。そこで、在来の動物を守るため、山域のネコを捕獲するとともに飼いネコの管理を進めたり、殺鼠剤によるネズミの駆除を行ったり、殺虫剤によるアリの駆除を行ったりしています。

ははじま丸下船時の靴底洗浄
ははじま丸下船時靴底洗浄

在来植生の保全

小笠原には、固有植物をはじめとした独自の植生がある一方で、侵略的な外来植物やノヤギの食害・踏圧によって在来植生が変化したり、希少な固有植物が食べられたり、植生がなくなり土壌流出が起きたりしています。そこで在来植生を守り、回復させるため、父島のみに生息しているノヤギは貴重な植生が残る区域に入らないような柵や銃器により排除が進められています。また、アカギやモクマオウなどの侵略的な外来植物の伐採や薬剤による駆除も進められています。

東平サンクチュアリの柵
東平サンクチュアリ柵

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