
東京の地下水と地形・地質
持続可能な地下水の保全と利用に向け、地下水位と地盤沈下の状況等について検証し、報告書をまとめています。
さらに、あまり目に触れることがない地下水についての基礎知識や最新の研究内容を、イラストや写真などを使い分かりやすく解説した「東京の地下水・地盤環境レポート」も作成しています。

地表に降り注いだ雨水は、蒸発散して再び大気へと還っていくもの、直接的に河川へと流出するもの、地面から浸透して地下水となるものに大別されます。
地下水は、長い年月をかけて地中をゆっくりと移動します。この過程で、台地の崖下や丘陵の谷間などから湧き出して河川水へと姿を変えるものや、より地中の深くに移動するものなど様々あり、その移動経路は複雑です。
地面(地中)は、礫・砂・粘土などの粒の大きさが異なる地層が重なっています。
帯水層 と 難透水層
- 帯水層:礫や砂などの水を通しやすく地下水で満たされた地層
- 難透水層:粘土層などからなる水を通しにくい地層や、堅い岩盤
この帯水層と難透水層が幾重にも積み重なっていて、その中を地下水が流れています。
不圧地下水 と 被圧地下水
- 不圧地下水:難透水層が上部に存在しない地下水
- 被圧地下水:上下を難透水層に挟まれて、上流にある涵養域(地下水が浸透する地域からの影響などを受けて、通常の不圧地下水よりも高い圧力状態にある地下水

複数地点で井戸内の地下水位を調査し、地下水位が同じ値の地点を線で結ぶと、地下水位等高線という地形図のようなものを書くことができます。地下水は、地下水位が「高い」ところから「低い」ところに向かって流れます。

第二次世界大戦前及び戦後の復興期に、工業用として地下水を大量に汲み上げた結果、地下水を含んでいた地層が縮んでしまい、最大約4.5mもの地盤沈下を引き起こしました。区部低地部を中心に建物などの構造物の抜け上がりや、ゼロメートル地帯(満潮面以下の地域)が発生しました。
現在は、地下水の汲み上げを規制することで、地下水位は回復傾向にあり、地盤も安定していますが、大きく沈下した地面が元のような高さまで戻ることはありません。
地盤沈下発生のメカニズム
帯水層である砂層から大量に地下水が汲み上げられると、砂層の地下水位が急激に低下します。この時、砂層に接している難透水層からも少しずつ水が砂層へ移動します(難透水層からの水の絞り出し)。難透水層の体積を支えていた水の粒がなくなることで、残った板状の粘性土層の粒子は、重なるように折りたたまれて固く締まり収縮した状態になります。これによって地盤沈下が発生します。

東京都の地形を西から東方向にみると、標高2 千~数百mの「山地」、標高350~55m程度の丘陵、標高50~8m程度の台地(武蔵野台地)、標高約8m以下の低地が分布しています。

比較的平坦な台地も詳細に観察すると、平坦面 (段丘面) と急崖 (段丘崖) からなる階段状の地形を複数段確認することができます。武蔵野台地では、地形的に古い方から多摩面、下末吉面、武蔵野面、立川面と呼ばれる4つの河岸段丘が広がり、多摩川に向かって徐々に平坦面の標高が低くなっています。
各段丘面を隔てる急崖のうち、特に立川崖線と国分寺崖線は湧水が多くあります。

西の台地部から東の低地部にかけての断面を見ると、地層は西から東に傾いています。低地は古利根川などにより削られ、不連続になっています。地層を南北に切ると、南から北にかけて傾いています。
東京都において被圧地下水の流れを決める重要な地層の三次元分布も以下に示します。

東京都では、大学との共同研究を実施しています。今後の最新結果についても反映していきます。
研究テーマ1:地下水流動系の解明(筑波大学との共同研究)
地下水が、どこでしみ込み(涵養源)、どのくらい時間をかけて(滞留時間)、どこを流れているか(流動経路)を解明する。

研究結果
地下水は3次元的に流動しており、特に浅い深度と深い深度においては、その流動傾向が異なること、台地部に比べ低地部において地下水の滞留時間が長い傾向のあることなど地下水の複雑な流動が示されました。等
研究テーマ2:地下水の揚水などの影響予測(東京大学との共同研究)
地下水を、どこで、どのくらい汲んだら、どこに影響があるか(ないか)を予測するシミュレーションを構築する。

研究結果
都内10か所について解析し、地盤変動の観測値を良好に再現できる地盤情報を推定することに成功しました。また、地盤内の間隙水圧を推定したところ、水の絞り出しの遅れによりまだ収縮の余地が残っている箇所の存在が示唆されました。等
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このページの担当は自然環境部 水環境課 です。