[水質浄化機能をもつ干潟][全ての生命の基盤となる生物多様性の恵み]088現 状 「生物多様性」とは、様々な自然があり、そこに特有の「個性」を持つ生きものがいて、それぞれの命が「つながり」あっていることをいう。生物多様性は、地球上の人間を含む多様な生命の長い歴史の中でつくられたかけがえのないものである。食料や水などの供給、気候の調整や水質の浄化、心の安らぎや芸術・文化、光合成による酸素の生成など、我々の生活に欠かせない多様な恵みを与えてくれている。 しかし、人間活動や気候変動などの様々な要因により、世界中で生物多様性の劣化が進んでおり、生物多様性は、気候変動と並ぶ地球規模の深刻な環境問題として、対策の必要性が急速に高まっている。生物多様性の保全・回復は、植物による二酸化炭素の吸収や、雨水浸透による大雨被害の軽減など、気候変動の緩和・適応にも貢献し、人々の良質な生活に大きく関係している。 我々が将来にわたって生物多様性の恵みを受け続けられる、自然と共生する豊かな社会を実現するため、生物多様性を回復軌道に乗せていく。調整サービス 二酸化炭素の吸収や大雨被害の軽減、水質の浄化等、人が健康で安全に生活する環境をもたらす機能。近年、こうした自然環境に備わる多様な機能を活用して社会課題を解決するNbS(Nature-based Solutions:自然を活用した解決策)やグリーンインフラへの関心が高まっている。文化的サービス 自然や生きものに触れることにより得られる芸術的・文化的なひらめき、教育的効果、心身の安らぎなど、我々の精神を豊かにする機能生物多様性の恵み(4つの生態系サービス) 我々の暮らしは、生物多様性を基盤とする生態系から得られる恵みによって支えられている。これらの恵みは「生態系サービス」と呼ばれており、次の4つに分類されている。供給サービス 食料、木材、水など、日々の暮らしに必要な資源を供給する機能。大都市東京は、食料、木材などを都外(国内外)の恵みにも依存している。基盤サービス 光合成による酸素生成、土壌形成、栄養循環、水循環等、自然の物質循環を基礎として全ての生命の生存基盤となり、他の生態系サービスを支える機能生物多様性をめぐる動向新たな世界目標の策定動向 現在、新たな世界目標「ポスト2020生物多様性枠組」について、生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)での採択を目指し、検討が進められている。2021年10月に中国・昆明市にて開催された第一部では、生物多様性を回復への道筋に乗せること(ネイチャーポジティブ)などを強調した昆明宣言が採択された。2022年12月にカナダ・モントリオール市で開催される第二部において、ポスト2020生物多様性枠組が採択される予定となっている。国においても国際動向を踏まえ、次期生物多様性国家戦略の検討が進められている。都は、こうした状況を見据え、2022年9月現在、生物多様性地域戦略改定の検討を進めている。生物多様性の恵みを受け続けられる、自然と共生する豊かな社会の実現
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