[C40に参加する96都市の温室効果ガス排出量](生産べース・消費べース)※5 英国ロンドンに本部を置くNGOであり、年金基金等の機関投資家や大規模な顧客企業の代理人として、企業や自治体などに質問書を送付し、回答内容の開示及び格付けを実施している。※6 SBT(科学的根拠に基づいた目標設定)は、企業が環境問題に取り組んでいることを示す目標設定のひとつであり、2022年7月7日時点において、認定企業1,504社、コミット企業1,778社、合計3,282社まで拡大している。(出典) 「THE FUTURE OF URBAN CONSUMPTION IN A 1.5℃ WORLD C40 CITIES HEADLINE REPORT」から加工して作成02629億tCO2都市内の生産ベース温室効果ガス排出量45億tCO2都市内の消費ベース温室効果ガス排出量 また、自社の事業活動からの直接の排出量削減に加えて、サプライチェーン全体での排出削減を強化するため、取引先企業にも脱炭素化への対応を求める取組も加速している。日本でも、2021年6月、株式会社東京証券取引所がコーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)を改訂し、「プライム市場」上場企業に対して、TCFD※4又はそれと同等の国際的枠組みに基づく気候変動開示を求めている。 企業に求められる気候変動対策への要求水準は高まっており、CDP※5やSBT※6などの気候変動イニシアティブに参加する企業も増えている。※4 気候関連の情報開示及び金融機関の対応をどのように行うかを検討するため設立された「気候関連財務情報開示タスクフォース」。TCFDは2017年6月に最終報告書を公表し、企業等に対し、気候変動関連リスク、及び機会に関する項目について開示することを推奨している。国内外で加速する再生可能エネルギーの導入と利用 IEA(国際エネルギー機関)の分析によれば、世界の再エネ発電設備の容量(ストック)は2015年に約2,000GW程度まで増加し、最も容量の大きい電源となった。その後も、再エネ発電設備の容量は、年間約180GWのペースで増加している。 欧州等では、既に水力・風力・太陽光などの再エネを主要な電源とする国も出てきている。これを背景に、再エネ大量導入時代を見据えた再エネ由来の水素(グリーン水素)の推進を明確にした戦略を打ち出している。 企業が自らの事業の使用電力を100%再エネで賄うことを目指すRE100への参加企業も年々増加している。一部のグローバル企業は、日本の子会社やサプライチェーンの取引先等に対しても再エネ電力の100%化を求めるなど、再エネを取り巻く状況は大きく転換している。 また、電力部門での取組を交通部門や産業部門、熱部門など他の消費分野と連携させることで、社会全体の脱炭素化を進める「セクターカップリング」の取組が始まっている。 再エネ・蓄電・デジタル制御技術等を組み合わせた脱炭素化エネルギーシステムの構築に向けた動きも、幅広い産業を巻き込んで加速しつつある。再エネを中心とした高度なエネルギーマネジメントが可能な分散型エネルギーシステムの開発や水素・メタネーションへの挑戦に着手する企業も増えつつある。「消費ベース」の視点を踏まえた対策の重要性 「消費ベース温室効果ガス排出量」とは、製品等が生産された際に排出された温室効果ガスを、その製品が最終的に消費される地域の排出量としてカウントする考え方である。一方、「生産ベース温室効果ガス排出量」は温室効果ガスの排出をその製品が生産された地域の排出量としてカウントする考え方である。 C40(世界大都市気候先導グループ)は、2019年に公表したレポートにおいて、都市は、グローバルなサプライチェーンを通して、地理的な境界を越えて温室効果ガスの排出に大きな影響を与えているため、消費ベースCO2排出量を考慮することの重要性を示している。 エネルギー使用の実態をより明確にできることから近年、その計算方法の研究が進められている。 都でも、都内最終需要に係る消費ベース温室効果ガス排出量(2015年)を試算したところ、約2.1億t‐CO2であり、生産ベース温室効果ガス排出量の倍以上の結果となった。 都は、世界的な大都市・エネルギーや資源の大消費地として、「消費ベース」の視点も踏まえ、先導的な取組を行い、国内外のCO2排出削減を進めていく必要がある。
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