[1850〜1900年を基準とした世界平均気温の変化]IPCC AR6 WG1を基に作成007化石燃料を利用し続ける排出量が「非常に高い」シナリオ(SSP5-8.5)排出量が「非常に低い」シナリオ(SSP1-1.9)東京が直面する環境課題についての認識直面するエネルギー安定供給の危機 化石燃料の産出地域は、比較的偏在しているため、資源輸出国の政治的要因によって供給が影響を受けるなど、我が国を含む資源輸入国は、これまでも調達先の多角化や市場介入など対応に迫られてきた。さらに、ロシアによるウクライナ侵攻などの影響により、化石燃料の国際的な価格が高騰するなどエネルギー安全保障が脅かされている。 エネルギー危機への対応として、欧州委員会は、2022年3月8日にEU域内のロシア産化石燃料への依存解消と、より安価で持続可能なエネルギーの安定供給を目指す政策である「REPowerEU」を発表した。天然ガスの供給先の多角化のほか、化石燃料依存の解消を目指しており、太陽光、風力、ヒートポンプの推進や、工場の電化や再生可能な水素への切替えを更に支援していくとしている。 日本、そして、エネルギーの大消費地である東京としても、海外からの化石燃料への依存を低減し、安定的なエネルギー供給を確立するために、省エネの更なる深掘りと、再生可能エネルギーの基幹エネルギー化に向けた取組、エネルギーマネジメントによる需給最適化に向けた取組等を加速する必要がある。 深刻化する地球環境の危機 ~気候変動と生物多様性の損失~ 今、我々の生存基盤である地球は、その存続が危ぶまれる状況に直面している。世界各地において、毎年のように発生する熱波や山火事、ハリケーン、豪雨等の記録的な自然災害、種の絶滅、水資源の減少、資源や食料の不安定化などのリスクが増大している。日本でも数十年に一度と言われる集中豪雨や巨大台風が毎年のように各地を襲い、河川の氾濫や崖崩れ等甚大な被害がもたらされている。こうした状況は、都民生活・事業活動に直接的な影響をもたらすだけでなく、エネルギー、資源や製品などを国内外からの供給に依存しているという都市の特性からも、東京の社会経済活動を揺るがす脅威となっている。 この深刻な状況を引き起こしている大きな要因として挙げられるのが、気候変動と生物多様性の損失である。気候変動の深刻化 直面する気候危機を回避するため、2016年に発効したパリ協定では、世界の平均気温の上昇を産業革命前から2℃未満に抑えること、1.5℃未満に抑える努力をすることが共通目標として掲げられた。また、2018年10月に国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が公表した「1.5℃特別報告書」では、世界の平均気温の上昇を1.5℃に抑えるためには、世界の温室効果ガス排出量を2050年までに実質ゼロ、2030年までに約半減させることが必要と示された。2021年11月に英国グラスゴーで開催されたCOP26では、1.5℃に抑える努力を追求することが世界的に合意され、脱炭素化に向けた潮流は、世界中で大きな加速を見せている。 しかしながら、IPCCが2021年8月に公表した第6次評価報告書第1作業部会報告書では、2021年から2040年までの間に1.5℃を超える可能性が非常に高いことが報告されている。 また、2022年4月に公表されたIPCC第6次評価報告書第3作業部会報告書によれば、2010年代の温室効果ガス排出量の増加率は2000年代より低下したが、排出量自体は依然として増加している。
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